「ねぇ、シェアしない?」


スマホにメッセしても電話しても、繋がらない。


達実のことを気にしつつ、私は自分の部屋で過ごしていた。


舞香の言いなりにならなかったことが、気分がいい。


初めて、反抗してやった。


もう2度と、言うことはきかない。


私は私。


誰ともシェアなんてしない。


それより、達実を探さないと__。


どうしたらいいか思案していると、どたどたと階段を上がってくる足音が聞こえ「優子、大変なの!」と、お母さんが部屋に飛び込んできた。


「お父さんが事故に遭ったの!」


「えっ__?」


スマホが手からこぼれ落ちていく。


「車に轢かれたのよ!」と、慌てふためくお母さんとは正反対に、私の頭は嫌というほど冷静で。


どんどん急速に体が冷えていく。


病院に駆けつけるも、命に別状はなくホッと胸を撫で下ろす。


どうやら轢き逃げのようで、お父さんは警察に事情を聞かれていた。


このタイミングで、轢き逃げ?


私が舞香の言うことに逆らった、このタイミングで?


このままじゃ、私の周りの大切なひとたちがみんな消えていく。


最後には、私ひとりになってしまうんじゃ?


警察が犯人を突き止め、舞香の元までたどり着いてくれれば__なんて淡い期待を抱くのと同時に、舞香の力はもっと恐ろしいんじゃないか?


それはほとんど、確信に近かった。


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