「ねぇ、シェアしない?」


屋敷の塀を乗り越えるのは、大変だった。


日付が変わろうという時間、私と彩音は敷地内に足を踏み入れ__頷き合って裏の勝手口から中に入る。


私が襲われたとき、中からは絶対に出ることができなかったのに__?


この屋敷の中に、達実はいるはず。


膨大な数の部屋があり、1つずつ調べていく。


けれど、ほとんどの部屋に鍵がかかっていた。


だから唯一、鍵のかかっていなかった物置に彩音を案内する。


アルバムを探して見つけると、彩音に見せた。


確認してほしかったんだ。


私の思っていることが、間違っていないと。


大きなため息をついてアルバムを閉じた彩音は、ゆっくり首を振る。


そして私たちは、どちらからともなくお互いの手を握り合った。


そうしていないと、足元から崩れ落ちてしまいそうで。


どれくらいそうしていただろう。


私はふと思いつき、スマホを鳴らした。


藁にもすがる思いで、達実に連絡をしてみたんだ。


すると__?


「優子、鳴ってない?」


「えっ?」


「ほら、聞こえる」


耳を澄ませると、確かに聞こえてくる。


達実だ!


やっぱり達実が近くにいる!


「行こう!」


私は彩音の手を引いて、音のするほうを辿った。


このドアの向こうから聞こえてくる。


そーっとドアを開けると。


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