「ねぇ、シェアしない?」
勝てない。
こんな化け物みたいな女に、勝てるわけがない。
この女は、私を完膚なきまでに潰す気なんだ。
始めっから、許す気なんて__。
「優子っ」
後ろから名を呼ばれ、私は辛うじて振り返る。
そこに、彩音がいた。
目に涙を浮かべた、私の友達が。
そうだ、諦めちゃだめ。
私が諦めたら、彩音までどうなるか分からない。
「も、目撃者がいるじゃない。私がそんなむごいことしてないって、証言してくれる友達がいる」
いくらなんでも、彩音までどうこうできるはずがない。
舞香は笑顔を引っ込め、厳しい顔で彩音を見つめている。
「もう、こんなことやめよう?こんなことしてもなにも戻ってこないよ」
消え入りそうな声だったけど、涙ながらに訴える彩音。
きっと、私以上に責任を感じているはず。
そんな彩音に手をかけるというなら、私はこの手で__この包丁を突き刺すだけ。
絶対に、友達を守るんだ。
「2人は、仲がいいんだ」
どこか投げやりな口調で、舞香が言った。
「私と、夏美みたいに」と。
強張っていた空気が、少しだけ溶けたのは彩音の涙のお陰かもしれない。
妹との絆を思い返しているような、優しい顔の舞香が__。
「ねぇ、彩音」