「ねぇ、シェアしない?」


勝てない。


こんな化け物みたいな女に、勝てるわけがない。


この女は、私を完膚なきまでに潰す気なんだ。


始めっから、許す気なんて__。


「優子っ」


後ろから名を呼ばれ、私は辛うじて振り返る。


そこに、彩音がいた。


目に涙を浮かべた、私の友達が。


そうだ、諦めちゃだめ。


私が諦めたら、彩音までどうなるか分からない。


「も、目撃者がいるじゃない。私がそんなむごいことしてないって、証言してくれる友達がいる」


いくらなんでも、彩音までどうこうできるはずがない。


舞香は笑顔を引っ込め、厳しい顔で彩音を見つめている。


「もう、こんなことやめよう?こんなことしてもなにも戻ってこないよ」


消え入りそうな声だったけど、涙ながらに訴える彩音。


きっと、私以上に責任を感じているはず。


そんな彩音に手をかけるというなら、私はこの手で__この包丁を突き刺すだけ。


絶対に、友達を守るんだ。


「2人は、仲がいいんだ」


どこか投げやりな口調で、舞香が言った。


「私と、夏美みたいに」と。


強張っていた空気が、少しだけ溶けたのは彩音の涙のお陰かもしれない。


妹との絆を思い返しているような、優しい顔の舞香が__。


「ねぇ、彩音」


< 191 / 206 >

この作品をシェア

pagetop