「ねぇ、シェアしない?」


びくん。


彩音の体が、大きく震えた。


「__彩、音?」


触れ合っていた肘が、少し離れていく。


その腕を掴もうとしたけど、私の手には放置が握られていて、なにをしても離すことができない。


いやいやをするように、首を振りつつ離れていく。


「私が、私が守るから!」


「彩音、私とシェアしようよ?」


「黙れ!お前はっ、黙れ!」


「彩音、楽なほうにいけばいいの。でも最初にひとつだけ」


ぼんやりした顔で、彩音が顔を上げた。


「私がしてほしいこと、わかるよね?」


__こくり。


催眠術にかけられたように、彩音が頷いた。


無表情で私を見つめるその目は、その目の奥は必死で戦っている。


悪魔との取引に、懸命に抵抗しているんだ。


「彩音、しっかりして!あいつの言うことなんか信じないで!」


「彩音、私が苦しみから解放してあげる」


「いやっ」


小さく呟き、彩音が頭を抱えた。


「彩音?」


「いやぁあああああー‼︎」


突然、絶叫した彩音が、真っ直ぐに私を睨みつける。


その目の奥にはもう、迷いがなかった。


涙だけはとめどなく流れているのに、吹っ切れたような表情で一言、こう言ったんだ。


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