「ねぇ、シェアしない?」


教室の空気が張り詰めた。


女子が全員、はっと息を飲み込んだからだ。


「あっ、うん、大丈夫。ちょっと肩に当たっただけだから」


そう言って舞香は立ち上がり、床に転がっているバスケットボールを拾う。


「向井くん、バスケット好きなの?」と。


「中学からやってたからな」


「そうなんだ。私も中学はバスケ部だったよ」


「えっ、マジで?」


「うん。こう見えてキャプテンだったんだ」


「スゲーじゃん!」


2人が笑い合っているその側で、彩音がぽかんと口を開けている。


きっと私も同じ顔をしているはずだ。


クラスの女子は、唖然としている。


あれだけ『向井達実に近寄らない』と釘を刺していたのに、2人はバスケの話で盛り上がっている。


私は恐る恐る、窓際に座っている安奈を見た。


険しいを通り越して、全くの無表情だ。それがまた、怖さを倍増していて__。


「転校生の桐崎だよな?」


「うん。どうして知ってるの?」


「このクラスの野郎が言ってたからさ、可愛い転校生がきたって」


「そんなことないよ。向井くんもカッコいいって超有名だよ」


「そうか?でも俺は__」


達実がちらっと私を見た。


いや、そんなことより、大変なことになった。


とんでもないことに。


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