「ねぇ、シェアしない?」
けれど、その日はなにも起きなかった。
お昼休み、いつものように彩香が教室から出て行き、舞香と2人でお弁当をシェアしている時も、安奈がこっちを睨むこともなく過ぎていき__。
でも、絶対に何かが起きるはず。
だって、向井くんと親しげに話している舞香を見る目が、それを物語っていたから。
このままで済むはずがない。
放課後は買い物に行こうと舞香に誘われたけど、やめておいた。
どうしよう。
もし安奈にいじめられるなら、友達として側に居ないほうがいいんじゃないか?巻き込まれるんじゃ?
ズルいと思われようが、私は自分が大切だ。それに彩音とは違い、舞香とはまだ付き合いが浅い。
でも、見て見ぬ振りをするのもなぁ。
そんなことばかり考えていたら、あまりよく眠れなくて。
なんだか嫌な予感がする。
昨日は嵐の前の静けさで、今日、その嵐が吹き荒れるんじゃないか__?
そんな気がするんだ。
だから足取りも重たく学校に向かう。そして教室に入った私は、いつもと何かが違うことがすぐに分かった。
決定的に違う。
見てはいけないものを見る空気、それはいじめがもう行われていることを示していて、私が自分の席に向かうと、舞香が肩を震わせていた。
やっぱり、始まったんだ。
安奈のいじめが__。