「ねぇ、シェアしない?」


けれど、その日はなにも起きなかった。


お昼休み、いつものように彩香が教室から出て行き、舞香と2人でお弁当をシェアしている時も、安奈がこっちを睨むこともなく過ぎていき__。


でも、絶対に何かが起きるはず。


だって、向井くんと親しげに話している舞香を見る目が、それを物語っていたから。


このままで済むはずがない。


放課後は買い物に行こうと舞香に誘われたけど、やめておいた。


どうしよう。


もし安奈にいじめられるなら、友達として側に居ないほうがいいんじゃないか?巻き込まれるんじゃ?


ズルいと思われようが、私は自分が大切だ。それに彩音とは違い、舞香とはまだ付き合いが浅い。


でも、見て見ぬ振りをするのもなぁ。


そんなことばかり考えていたら、あまりよく眠れなくて。


なんだか嫌な予感がする。


昨日は嵐の前の静けさで、今日、その嵐が吹き荒れるんじゃないか__?


そんな気がするんだ。


だから足取りも重たく学校に向かう。そして教室に入った私は、いつもと何かが違うことがすぐに分かった。


決定的に違う。


見てはいけないものを見る空気、それはいじめがもう行われていることを示していて、私が自分の席に向かうと、舞香が肩を震わせていた。


やっぱり、始まったんだ。


安奈のいじめが__。



< 32 / 206 >

この作品をシェア

pagetop