「ねぇ、シェアしない?」
「大丈夫だから」
耳元で柔らかい声が聞こえた瞬間、ばしゃんと汚水を浴びせられた。
強烈な匂いが鼻をつき、吐き気が込み上げてくる。
「ブタ同士、抱き合ってんじゃねーよ!」
さらに2杯、3杯と、投げつけるようにバケツの汚水をぶつけられ__思わず意識が遠くなっていく。
「優子、しっかり」
私を強く抱き締め、舞香はそう言った。
私の盾になって、汚水を全身に浴びているというのに、その目は力強い。
そんな舞香に勇気付けられ、私も必死に耐えた。
いつかは終わる。
いつかは終わるのだから__。
「くっせ。教室に戻ってくんじゃねーよ!」
そう吐き捨てて、安奈たちがトイレから出て行った。
やっと終わった。
制服から下着、なにもかもずぶ濡れで、汚い水が心までも腐らせていくよう。
なぜなら、いじめは終わらないから。
それどころか、完全に舞香を巻き込んでしまった。
「__ごめん」
急に涙が溢れ、私は声を押し殺して泣いた。
私のせいで、舞香まで。
私は別に良かった。彩音のように、私のことを見離してもそれは仕方がない。だから舞香も私に汚水をぶちまけても良かったのに__。
「謝らなくていいよ。だって、親友でしょ?」