「ねぇ、シェアしない?」
激しく咳き込んだ安奈の目が一瞬、怒りで燃え上がる。
「こ、こんなことして、ただじゃすまさない」
静かな怒りは、足元から震え上がるくらいに恐ろしい。
やると言ったらやる女だ。
ましてや、こんな屈辱を味わって黙っているわけがない。
これじゃ、また前よりいじめられるだけじゃ?
「安心して」
舞香が隣にやってきた。
私の肩を抱き、口汚くわめいている安奈を2人で眺める。
「2度と、いじめができないようにすればいいの」
そんな言葉に、安奈がぴたっと口を閉ざした。目からは怒りが消え、代わりに怯えが渦巻く。
それは、胸がすーっとする思いだった。
「優子はどうしたらいいと思う?どうしたら、この女が2度と私たちに手を出さないと思う?」
「それは__」
2度と立ち上がれないくらい、こてんぱんに痛めつけないといけない。
もう後には引き返せない。
前にも増していじめられるか、いじめをやめさせるかの、瀬戸際だ。
「簡単じゃない。2度と立ち上がれないようにすればいいのよ」
やっぱり、舞香も私と同じことを考えていたんだ。
でも、それくらいのダメージを与えるには、どうしたらいいか?
なにか弱味を握るとか?
でも、舞香と私の考えは、同じようで全く違っていたんだ__。