「ねぇ、シェアしない?」
手のひらの中の答えを、私はとっさに握り潰す。
こんなの、見つかったらやばい。
赤点どころの話じゃない。
視線を左右に泳がせるけど、誰も気づいていない様子。
私の席は1番後ろだし、みんな険しい顔で答案用紙と睨めっこをしている。
この答えを書き込めば、赤点は免(まぬが)れる。
私はそーっと、握りこぶしを開いた。
舞香が投げてよこしてくれた解答を書き込む。
チャイムが鳴った。
「はぁー」
緊張いていたのか、肩が重たい。でもこれで、80点は取れたはず__。
「優子、赤点だって言ってたからさ」
舞香がやってきた。
「でも、いいのかな?」
「見つからなかったらいいんじゃない?これもシェアだよ」
「えっ?」
「お互い、苦手なところも共有するの。そしてそれを補う」
「補う?今みたいにってこと?」
「そう。優子は数学が苦手。私は社会が苦手」
それって、今度は私が答えを投げる番だってこと?
でもそんなこと__。
私が押し黙っていると、舞香が後ろから肩に手を伸ばし、耳元で囁いた。
「私は優子を助けたいだけ。だから無理強いはしないから。ただ、色んなものを優子と分かち合いたいんだ」