「ねぇ、シェアしない?」
社会科は島谷だった。
40代後半で未だ独身、無愛想で厳しいだけの担任は、もちろん生徒たちからは毛嫌いされている。
そのことを知っているからか、やたら女子には当たりが強い。
私と舞香が明らかにいじめられているのに、知らん顔をするくらいだ。
厄介ごとは見て見ぬ振りをする、そんなクズ教師だった。
でも今は、眠っている。
こんなの、カンニングのし放題じゃない?
かりかりと答案用紙に書き込む音がするだけで、教室内は静まり返っていて__斜め前の舞香が頭を抱えているのが、後ろから見えた。
これまでカンニングなんてしたことがない。
しようと思ったこともない。
けれど、これは舞香のため。
私は答えに困っていないし、数学で悩んでいた私に、舞香は答えをくれた。それに無理にやれとも言わない。私を助けたいだけだと__。
それならやっぱり、私も舞香を助けたい。
困っている親友を、放ってはおけない。
メモに答えを書き込んで、くしゃっと丸めた。あとはここから投げるだけでいい。
島谷は相変わらず眠りこけている。
問題は、周りの生徒に気づかれないように__。
すとん、と舞香の机に紙くずが落ちた。
はっと身を引いた舞香が、メモを確認する。
そして後ろを振り返って、はにかんだ笑顔を浮かべた。