「ねぇ、シェアしない?」
島谷はまた眠っている。
生徒に全く興味がない証拠だ。そのせいで、今日も軽々とカンニングができる。
彩音には気をつけないといけない。チクったりはしないだろうけど。
問題の解答をメモに書き写し、軽く丸めた。
大丈夫、みんな真剣にテストに向き合っている。
よし、今だ。
丸めたメモをふんわり放り投げようとした時、ばっちり目が合ってしまった。
舞香の斜め前の彩音が、私を振り返ってじーっと見つめている。
そして小さく首を振った。
投げようした体勢のまま、固まる。
眉を寄せて彩音を睨みつけると、その目が大きく見開かれ__なによ、そんなに驚くことないじゃない。
がしっ、といきなり手首を掴まれた。
「えっ⁉︎」
はっと顔を上げると、前の机で眠っていたはずの鳥谷が、私の手首を掴んでいたんだ。
唇の端っこがつり上り、薄っすら笑っている?
「これはなんだ?」
力ずくで拳をこじ開けられ、メモを奪われた。
バレた。
どうしよう。
「俺のテストで、堂々とカンニングするとはな」
「ち、違うんです!」
「なにが違うんだ!」
鳥谷に両手で思い切り机を叩かれ、体が震えだす。
「ちょっとこい」
無理やり引っ張られ、教室から連れ出される。
みんなが面白がって見ている中、舞香だけはじっと、私の顔から目をそらさなかった__。