「ねぇ、シェアしない?」


クレープ屋さんで達実と2人、デートをしていた。


店内の女子みんなが、ちらちらと達実を盗み見ている。


そして私には、鋭い視線を投げてくるんだ。


でも残念でした、達実は私の彼氏ですから。


口の端についたクリームを、周りに見せつけるように拭いてやる。


しかし、さっきからずっと気になっていることがあって__。


テーブルの上に置かれた達実のスマホが、ブルブルと震えているんだ。


電話じゃなく、メッセか。


ラインかもしれない。


私たちのデートを邪魔するように、震え続けている。


実は、前まではこんなことはなかった。


ラブホデートの時は、外野に邪魔されることなく静かにすごせたのに、ここ最近なんだ。もっと正確にいうなら、私と付き合ってるのがバレた後。


それまでは、向井達実は手の届かない推しメンであって、高嶺の花だった。


それが、私という彼女の存在が発覚し、それなら私のほうが?なんて思う女子が続出した。なんて失礼な話だと腹が立ったけど、実際、告白者は後を絶たない。


その関係なのか、メッセがやむことはなかった。


「ちょっとトイレ」


席を立った達実がいなくなる。


テーブルに、スマホを残したまま。


そしてそのスマホは、相変わらずぶるぶると震えていた。


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