喪失姫と眠り王子






頭を抱えていると、夜空の月の向こうから1匹の鳥が飛んできた。









「ハト?」








足には文が付けられておりその文をとると、ハトはまた月の方へと飛んで行った。







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鬼輝さま。お元気でしたか?


私はあの事件以来、いっそう元気が増しました。


久しぶりに文を書いてみたのですが、ちゃんと届きましたかね?


あっ、鬼虎組の子達が鬼輝さまが記憶を取り戻していないと言っておりましたが……。



とても寂しそうでしたよ。



そして、私も寂しいです。



早く取り戻してくださいね、我らの君主。




ひよじぃより

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「ひよじぃ?聞いたことある」







文を読み終えたあと、また突然激しい頭痛に襲われた。













『鬼輝さまー!こっちに来てください。お腹すいてるでしょ』






『ひよじぃったら!分かってるじゃない』







『ははは』














何これ…………。











『キキー!』







『もー、なに!大きな声出さないでよ』








『いいじゃん。』








『あーあ、悠太が落ち込んだ』






『康太、お前が慰めろ』







『こいつを!いやだ。』






『ふっ』











誰なの?













『鬼虎組だよ』






「えっ」







『仲の良かった妖達だよ』







「少し、思い出したような気がする」







『そうか。』













意識は元にもどり、目を開けるとベットの上で寝ていた。





鬼輝は、妖怪界のこと、鬼虎組の事。






もうその夜は、早く寝ることにした。





















次の人。







私は学校に行かなかった。








学校には行かず、GWに行った所へと向かった。







ついた時、初めに向かったのはあの砂浜だった。






ゴミ1つない砂浜は誰かが掃除をしているのだろう。






長い時間眺めたあと、お寺に向かおうとした時、男子の声が聞こえてきた。






「早くゴミ拾えよ」






「もうねーだろ」






「あるやろ、よー見ろや」








「二人とも……兄弟喧嘩はやめろ」







「「……」」










鬼輝は、男子の集団に見られないように背後に近づいた。






男子は5人おり、2人は双子なのだろう。






名前もはっきり思い出した。






双子の兄は康太(コウタ)、弟が悠太(ユウタ)。




2人の喧嘩を止めたのが、夜久(ヤク)。






3人を見守っていたのが、湊(ミナト)、紗夜(サヨ)。





懐かしく思いその場に立ち尽くしているとじゃれていた悠太が、勢いよく私にぶつかってきた。








鬼輝に、悠太が覆いかぶさるような体制になった。








「お、おい。大丈夫ですか」





「悠太!どけろよ」






「っ痛い」







どうやら悠太は、捻挫したようだ。





それにしても覆いかぶさったままだからか、5人は鬼輝だと気づいていない。








ようやく立ち上がった悠太は、








「お姉さん、ごめんなさい。お怪我はない?」









「悠太こそ、大丈夫?」








「「っなんで名前を」」








そうか、麦わら帽子を被っていたから顔が見えないんだ。







麦わら帽子をとると、








「キキ!」





「き、キキ」








捻挫したはずの悠太が勢いよく抱きついてくる。







「相変わらずだね、悠太」







「うん。良かった!記憶戻ったんだね」








「いや、全部ではない」










「そうなんだ……」







「まー、それはいいとして倉庫に行かない?」












倉庫は、山の中にあり三階建ての大きな家だ。





5人の紹介をしよう。








悠太(狼)



ムードメーカーで、可愛い。


髪の毛はミルクティー色デ目が紺色。






康太(狼)





クールな一面もあるが悠太と一緒で甘えん坊。





髪の毛はミルクティー色で、目が青色。










夜久(猫)。



いつも兄弟喧嘩を止めるお兄さん的な存在。



運動神経がよく面倒みがいい。




髪の毛は茶髪で、目の色は少しグリーンがかっている。









紗夜(豹)。





あまり言葉を発さず、人見知りが凄い。



女の子があまり好きではないが鬼輝のことは大好き。



髪の毛は黒で、目の色は赤。











湊(鷹)。




いつも控えめだが、頭が良く人に頼られる存在。



怒った時はいちばん怖い。




髪の毛は黒とシルバーのメッシュで、目の真っ黒。












「ついたよ」








「何も、変わらないね」








「当たり前だろ。さ、入ろ」







「うん」












家に入った鬼輝は、5人に今までのことを全て話した。








そしたら、思い出していなかったひよじぃの事などについて話してくれた。






それから他愛もない話をし、外は太陽がおち始めていた。







帰る電車はないため、その日は倉庫に泊まることにした。







「キキ……」






肩が付くほど近くに紗夜が座ってきた。









「ん?珍しいね。紗夜が甘えてくるなんて」







「ずっと寂しかった。キキが居ないと……僕ダメみたい」







「そう?私愛されてるね」







「うん。みんなにね」











バタバタ、慌ただしい足音に勢いよくドアが開かれる。






お風呂から上がったばかりの、悠太が慌てた様子で鬼輝の隣に座った。









「紗夜!キキは、僕の!」





「お前のじゃない……五月蝿い」





「!!あっちいって」







「こら!ってか洋服着なさい」






なだめるように悠太の髪の毛をタオルでふいてあげると悠太は、満足そうに大人しくなった。







双子だからか、同じように康太も部屋に入ってきた。






ただ一つ違うのは







「うわ!」





「康太!ズボンぐらい履け!」






「あっ、忘れてた」





「キキ、見ちゃダメ」











騒がしい一日が終わろうとしている頃、最後の騒がしい時間がやってきた。







「やだ!僕の隣で寝るの」






「悠太!お前の隣じゃない俺だ!」






「僕の、隣……」






「いや、俺の隣やろ」




「俺の!隣に来て」






私、5人から責められています。








「いや、私ひとりで寝るから」






「「えー」」







「えー、じゃない。おやすみ」
















雀のなく声とともに、暑ぐるしさを感じて目を開けると何故か私の周りには5人もの男達が眠っていた。






暑い理由がわかる。





身体中に手が巻き付けられているからだ。








「暑い」






「「……」」






「気持ちよさそうな寝息立ててんじゃねーーーーよーーー!」






「うわ!」






「ビックリした」




「大声出すなよ」








「いつから来た?」








「ん?12時くらい。そしたらもうみんないた」







「……もーいいから出ていって」










パジャマから洋服にきがえていると、1本の電話がかかってきた。







相手は希音だった。








『もしもし、』






「どうした?」








『どうした?じゃないよ。どこにいるんだよ』








「あー、GWに来たところ。」








『あぁ、あそこか。迎えに行くから待ってて』







「あ、うん」








リビングに戻ると、食卓にたくさんの朝食が並べられている。






他のみんなはもう席に着いていた。








懐かしさを感じながら食事を終えるとちょうどいい時に携帯が鳴った。









『今駅に着いた。住所は?』








「あー、駅まで行くよ」








『そう。早く来てよ』







「了解」








電話を切り帰る準備を始める。








「ごめんみんな。もう帰るわ」







「えっー!もう?」







「もうちょっと居てよ」








「……」








「ごめん。友達がむかえにきてるの」







「友達?男?」







「うん」







「「お見送りする!」」








駅につき、少し苛立ちが隠せていない希音が立つているのを見つけた。







手を振り希音の方に走っていくと、希音の目線は何故か後ろを向いていた。








不思議に思い、後ろをむくと5人が腕を組み睨むような体勢になっていた。








「ちょっ、喧嘩しそうな雰囲気辞めて」






「だれ?こいつ」







「鬼虎組だよ」







「あー、なんかいるっては聞いたことある」







「みんな、こっちは希音」





「「希音?」」







「も、もしかしてだけど貴族?」







「そうだけど」









5人は驚いたような顔をし、膝を地面につき土下座の状態になった。







妖怪界の掟として、貴族や王族には初対面の時、土下座をしなければならないという昔から言い伝えられている。






田舎の駅だからよかったものの、都会の駅だったら異様な光景に通報されてもおかしくはない。







「ちょっ、希音!辞めさせて」







土下座は、している相手にしか辞めさせることが出来ない。





例え、見ている側が王さまでも止めることは出来ない。








「やめろ」






「「はい。」」








「ねぇ、私土下座しなくていいのかな?」






「キキはしなくていい」








「でも、希音は貴族なんだよね」







「そうだけど……キキは俺より凄い」







「どういうこと?」









「あー、そういう事か」







「キキ!いいじゃんその話は」








「早く帰らないと心配してるよ、みんな」










長い道のりを不機嫌な希音と一緒に帰る。






希音は席を立ちトイレに向かった。







すれ違うように黒い帽子を被った男が私の後ろの座席に座った。









「お前。覚えているか」







「?」








「聞こえているだろ」







「あの、私ですか?」








「そうだ。お前だ」








「すみませんがどちらさまですか?」









「声でわからぬとは、やはり思い出していないのだな。よかろう、一つだけ教えてやる。あの国はもう終わりだ」








「あの国?なんですか?」







勢いよく振り向くも、もうそこには誰もいなかった。






ただ一つあったのは黒い羽。







烏の羽だろう。



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