喪失姫と眠り王子
『今日はある3人の方がユニットとしてデビューされます。
では登場してもらいましょう。』
デビューした当日からオファーの電話が止まらなくなった。
3人のシンクロしたダンスは話題になり、音楽番組によく呼ばれるようになって行った。
1ヶ月ほど続いた仕事に休みをもらい、次はサラのお父さんの舞台の準備に入った。
同じ共演者は名の売れている人ばかり。
ヒロインを狙っていたであろう女優さんからは敵対心丸出しにされた。
私、やってけるかな?
「キキ、久しぶり」
「久しぶりでーす。今日はありがとうございます!」
「こちらこそ」
「今回の台本呼んだか?」
「バッチリ。内容が良かった!」
「そうだろ。」
「眠った王子様を姫が助けるって……あの話の逆じゃん」
「まーな。面白そうだろ?」
「うん!」
セリフの読み合わせをすることになった。
舞台は約2時間あり大まかな流れとして、2人が出会って、駆け落ち、見つかって、怪我して、寝込む、その後に姫が助ける。
シンプルな流れだが途中で歌も入り意外と大変な流れとなっている。
「さぁ、まず自己紹介してもらおうか」
「じゃぁ、ボクから!
初めまして、今回王子役をさせて頂きます、宮野 透(ミヤノ ヒデ)です。よろしくお願いします!」
「姫役の 鬼輝です。よろしくお願いします」
次々と役名と名前を紹介してもらった。
多い出演者の自己紹介も終わり、セリフ合わせに入った。
それがとわり少し休憩が取られていると、
「鬼輝さん。姫役なのにその髪色でするんですか?」
「ちょっと合わないと思うんですけど」
「そうですか?染めろとは言われていませんので」
「いや、ふつーに言われなくてもわかるでしょ」
「っ、なんでそんなに怒っているんですか?それにこの髪地毛なんで」
「えー、地毛なんですか!気持ち悪いー」
「「キャハハハハ」」
姫役が出来なかったから妬んでいるのか、ガラが悪い。
そんなの気にせず、席につこうとした時。
「そんな言い方ないと思いますが」
「えっ?」
「周りからしたら僻んでるようにしか見えないんですけど。空気が悪くなるのでやめて貰えません?それが無理なら辞退してください」
「ひ、透さん」
目をうるうるさせながら女優達は立ち去って行った。
男に態度変えるとか気持ち悪。
「あの、ありがとうございます」
「いえ、あんな言われたら言い返さないと」
「何を言ってもあの人たちには嫌味にしか聞こえないんですよ。だから我慢するのが1番」
「ふっ、サラが言ってた通りだ」
急に口元を抑え笑い始めた。
なんで笑っているのかが不思議でポカンとしていると透は、こちらを向いて話し始めた。
「僕は宮野 透は芸名なんですけど、颯那颯人
の弟、冬奈(トナ)と言います。」
「あー、弟がいるっては聞いてたけど、あなたが」
「はい。確か同じ歳のはずですよね。敬語はやめてください」