喪失姫と眠り王子





GWに突入し、例のお寺に向かう。





付き添いとしてキキの両親が付き添うことになった。






新幹線やJR、バスを乗り換えてようやく着いた。








「着いた!!」






「遠かったー」






「確かに。ね!見て、海が綺麗」







「うわー!泳ぎたい」









「ほら、お寺さんに向かうわよ」





「「はーい」」









お寺は木造建てで綺麗に保たれている。







広い庭に大きな桜の木が、植えられており池には色とりどりの鯉が泳いでいた。








住職さんは五十代後半でお次の人として若い方もいた。








泊まる部屋に案内され部屋の中は彫刻が飾られていたり、生け花が置かれていた。








「なんか、お寺じゃないみたい」







「……そうだね」








「?なんでみんな元気がないの?」








「い、いや別にない訳では無い。ただキキが」







「わたしが?」








「なんでもない」










「ほら!ここってご飯とか自分で作らないといけないらしいの。だから、食料調達に行きましょ」








「いいな」








お寺らしく自給自足の生活が体験できるため、最近泊まりに来る人が多いそうだ。







そのため調理器具や、設備は整っている。







心花と鬼輝のお父さん、心音は海に魚を釣りに行く。







その他は山に山菜を採りに行くことになった。







山道はそこまで整備されておらず足場が悪い。






鬼輝は、お母さんを気遣いながら食料をさがした。






一時歩いたら、たくさんの名の花が咲いている場所を見つけそこで山菜を探すことにした。








「私あっちの方を探してみる。」








「遠くに行っちゃダメよ」







「はいはい」










どれくらい歩いただろう。






辺りを見渡しても菜の花の姿が見えない。








山菜採りに夢中になりすぎた鬼輝は、道に迷ってしまった。






「やっちゃったな」







そこは近くに森林が見える。






するとそこからは誰かの声が聞こえてきた。







男性の声で掠れている。










『……よれ。こっちによれ。食べてやる』







「誰?」








『お前は記憶をなくした王だな』








「は?何言ってんの」







訳の分からないことを言う声はだんだん近づいてくる。






でも、辺りを見渡しても誰もいない。







不気味に思い1歩、後ずさると足首を誰かに掴まれた。








「やっ!やめて」





『こい、こい、こい』







「誰なの?姿を見せて」







うっすらと姿を現したのは口の大きい気持ち悪い物体だった。





一言で表すと、妖怪。







怖さのあまり腰が抜け、その場に尻もちを着いてしまった。







もう食べられると思い目を固くつぶると








「やめろ」








低い聞いたことの無い声が聞こえた。






驚いて目を開くと、見覚えのある人だった。








「お前、その手を離せ」







『誰だお前。殺してやる』







「殺す?お前ごときが、この俺様を?」






『その喋り方、もしやあの狐か?』








「そうだよ。喋る時間が無駄やから殺す」








その言葉を発して一瞬だった。






おしりから大きいしっぽが現れ耳が生える。






手から青い炎ができ、一瞬にしてその妖怪は消え去った。











「あなたは……透先輩?」







「あぁ、そうだが」








「そんな喋り方でしたか?」








「この姿の時はな。ところでまだ記憶を取り戻してないのか」






「なんで、知ってるの。私が記憶をなくしたこと」






「さあな。今日は記憶を取り戻すために来たのだろう。あの寺に。あそこはあっちとの境界線だからな」









私の言葉も聞かずに先輩は、その場を立ち去った。








頭の中が混乱し整理がつかなかったため、一時の間身動きをとることが出来なかった。








さすがにお母さんと希音は、鬼輝がいないことに気がつき、鬼輝は2人によって見つけられた。







その日の夜は、気力が残っておらず何もしなかった。







食事だけはとることにしたが、一向に減らない。









「キキ、どうしたんだ?」






「美味しくない?」







「ううん。美味しいよ。でもお腹が減ってない」







「大丈夫?熱でもあるの?」








「いや、言っていいのかわからないんだけど今日、変なものを見たの」









「変なもの?なにそれ」









「妖怪」









鬼輝以外のみんなは、目を点にしていた。









「どういうこと?見えたの?」







「うん。あと、透先輩の手から炎がでてた。狐?っても言ってたし」








「透がここに?マジかよ」









「最近疲れてるのかも……。もう寝る」







「お、おやすみ」










鬼輝が、隣の部屋にある布団に入り深い眠りについたころ。






5人は真剣な眼差して話をし始めた。









「もう、言った方がいいんじゃないんですか?」







「私もそう思います。」









「朴さんと、桃音さんはどうしたいんですか?」








朴(ハク)は、鬼輝の父親。






桃音(モネ)は、鬼輝の母親だ。









「私達も出来れば元どうりになって欲しい。」








「でもお前らは知らんだろう。あの子がどんだけ苦しんでいたか」









「……はい。」








「あの子が記憶をなくしたのはあなた達を守るためだったの。」









「そう、だったんですか……。確かに昔の俺は弱かった。でも今なら守れます」







「もっともっと強くなってみせます!」








「「……」」










「もう、この話は終わりだ。俺も考えてみるよ」











くらいムードの中、鬼輝の昔が明かされていく。








鬼輝は、何者なのだろうか。









それは後ほど……わかるだろう。









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