喪失姫と眠り王子
使用人に見つからないようにオーラを消し、城に入る。
遅い時間にも関わらず起きている使用人もチラホラいた。
上へと進み、襖の前に立つ。
1回深呼吸をして襖を開くと、目を瞑った透がいた。
そばに腰を下ろして、久しぶりに手を握る
冷たい……、。
手の冷たさに涙が出てしまいそうだった。
ぐっと堪えて、自分の思いを伝えていく。
「透……ごめんね。私が記憶をなくしたせいで辛い思いさせて。
昔、許嫁だからって一緒にいたけど本当は違うの。あの時から、透のことが大好きだった。一緒にいるだけでよかったの。
そんな時が続くと思ってたのに……。」
自然と力が手にこもる。
涙を拭い、透の顔を見る。
「透がいなくなるって思ったら、私耐えきれないみたい。
お願いだから……戻ってきて」
鬼輝の目から1粒の涙が零れた時。
透と繋いでいたてから眩しい光が現れた。
それは見ものような形をしており身体中を巻き付けてくる。
その時……。
透の手に力がこもり、うっすらと目が開かれていく。
「き、キキ……」
「透!」
思わず思いっきり抱きしめてしまった。
3年半という長い月日の想いが一気にあふれでてしまう。
「キキ。ゴメンな」
「私こそ。なんで龍なんかに寿命をあげたの!」
「キキを、守りたかった」
「そんな事しなくても」
「俺、キキが記憶をなくして会議室であったことあっただろ?」
「うん」
「その時すごく、悔しかった。自分の好きな人が自分を忘れるなんて」
「うっ。ごめんね」
「だから、こんなことになったのは自分のせいだと思った。
そしたら今度は自分の番かな?って思って」
「バカ」
「今まで伝えてなかったけど……大好きだよ」
「私も、大好き!」
2人は強く抱きしめあった。