あなたを好きだった頃、

 チャイムが鳴る。
 それを合図に、さっきまで散らばっていた人の群れが一斉に小さく整頓される。私はその群れに馴染みながらあの人を探す。あっちにいたあの人がこちらに向かってくる。私は何も知らない顔で前を向く。嘘だ、ほんとはあの人を知っている。あの人との距離が近くなる度に心臓の鼓動が速くなる。
 あの人は何処に並んでいたんだろう。遠いかな?近いかな?そう思うと気が気でなかった。5個、3個、1個。あの人との距離を数えながらあの人が止まるのを待った。
 すると、あの人の大きな背中と私の小さな背中が重なった。
 あの人との距離は0だった。まさかの私の目の前だった。運が良かったのか、私たちの体育の合同クラスは4組と6組と8組の3クラスだった。そして体育の整列は、前から4組、6組、8組だった。そして出席番号順に並ぶのがルールだったのだが、あの人は私と同じ17番だったみたいだ。

 もう会えるかどうかわからないと思っていた不安が一気に弾けてなくなった。これから月曜日と水曜日と金曜日は、体育がはじまる前と終わるときはこうしてあなたの後ろに並ぶことができる。そう思っただけで、あれだけめんどくさいと思っていた学校が楽しみに思えたからだ。

 その日の体育はスポーツテストだった。他のクラスに比べて少人数だった私たちのクラスは授業の半分くらいでその日の競技を終えてしまっていた。体育が終わるまではまだ30分も残っている。測定が終わった人から自由時間だったため、体育が終わるまで武道場で話したり、だらだらと過ごしたりしていた。
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