あなたを好きだった頃、
 髪につけるコロンで迷う。1つは友達から誕生日プレゼントでもらったラベンダーの香りもの。もう一つは昨日の帰りに雑貨屋さんで見つけたラズベリーの香りのもの。2つのコロンの蓋をあけて匂いを嗅ぎ比べる。

 ラズベリーってこんなに甘酸っぱい香りなんだ。

 西原くんのことを考えると嬉しくなるのに、苦しくなる。
 そんな気持ちがラズベリーの甘酸っぱい香りに重なった。だから私は昨日買ったコロンを選んで髪につけた。
 授業の間、良い匂いがするなって振り向いてくれたら。
 そんな甘い期待でいっぱいになりながら私はカバンを持って急いで家を出た。
 
 電車まであと8分。私は傘を差したまま駅までの道を走る。走らなきゃ遅刻してしまう。湿気と風でくせ毛にならないかを心配しながら、学校につくのにワクワクしていた。

 電車には何とか間に合った。電車に乗ってしばらくすると、電車の窓に映った自分を見ながら私は少し広がった髪を直した。なぜだろう。西原くんのことを考えると髪を触りたくなる。こそばゆい。でも、このこそばゆさがずっと続けがいいのにと思った。

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