浅葱の花びら
僕に何かを言おうとしてくれている
その姿が愛おしくてたまらない


右手親指で藤太郎の震える唇に触れた



まあるい目が、僕の行動の意味を理解しようと揺れていた



「藤太郎の声が聞きたいなぁ」



僕が近くにいても
触れても怯えないことを確認しつつ


僕は、そっと、優しく、唇を重ねた



「僕が嫌なこと忘れさせてあげる」



抵抗されたら、すぐにやめるつもりだった

藤太郎は、僕に身を任せてくれた



時々、藤太郎が声を発した

「もっと聞かせて」



藤太郎と体を重ねた



「早く声出るといいなぁ~」



藤太郎が起き上がろうとしても
僕は抱きしめて離さなかった


門限に間に合うギリギリまで
僕は、藤太郎を独り占めしたかった







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