美男子の部屋に保護されました
「それがいいと思いますよ。
せっかく彼氏がこう言ってくれてるん
ですから、甘えさせてもらいなさい。」

警察官にそう言われて、宮原さんはにこにこと満面の笑みで頷いている。

いやいや、彼氏でも彼女でもないし。

でも、嬉しそうにしている宮原さんの前でそれを言い出せなくて…

「では、我々はここで失礼します。
何かありましたら、すぐにご連絡ください。
巡回も今夜から強化して、犯人逮捕に全力を
尽くします。」

と、お巡りさんは帰って行ってしまった。

「じゃ、当面、必要なものを取りに
行こうか。」

宮原さんは当然のように言うけれど…

「でも、名前しか知らない人にそんな
ご迷惑をお掛けするわけには… 」

私が言うと、宮原さんは少し不機嫌な顔をした。

「名前だけじゃない。
由里子さんの勤め先は図書館で、
俺は宮原書店。
俺は、由里子さんが好きな作家さんも
知ってるし、恥ずかしがり屋で穏やかな性格
なのも知ってる。
それにその他の事は、これから知っていけば
いいだろう?」

いや、でも…

私が何て断ろうか思案しているのを横目に、宮原さんは携帯から電話を掛け始めた。

「あ、矢島?
悪いんだけど、今から2トン車、俺んちに
回して。
ーーー そう。
あ、やっぱり、コンビニがいいや。
何分で来れる?
ーーー 分かった。着いたら電話して。
よろしく。」

2トン車!?

今夜だけお泊まりじゃなくて!?

電話を切った宮原さんは、路肩に止めてあった私の自転車のハンドルを持ち、スタンドを跳ね上げた。

「さ、行こう。」

いや、行こうって…
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