美男子の部屋に保護されました
出会い
「お先に失礼します。」
私は挨拶をして職場である図書館を後にする。
梅雨明けして間もないこの頃は、閉館の6時半を過ぎても辺りはまだ十分に明るい。
私は、周りに人がいない事を確認して、自転車に乗り、いつものように最寄りの大型書店による。
帰りに本屋に寄るのは私が学生の頃から習慣。
お小遣いの少ない中学生の頃に、立ち読みをするため毎日書店に通っていたのが、今では収入もあり、図書館に勤めてもいるのに、やめられない。
最近では、気のせいかもしれないけれど、妙な視線を感じる時があり、なんとなく警戒はしているんだけど、それでもまっすぐ帰らず、本屋に寄ってしまうのはもう病気と言ってもいいのかもしれない。
そんな私が、いつものように書店に入ると、入り口正面に大好きな作家さんの特設コーナーが作られていた。
やった!
私は嬉しくなって、そのコーナーに足を向ける。
……が、その掲示物を見て、固まってしまった。
『訃報』
『素晴らしい作品をいくつも残して
突然この世を去った彼女に
敬意を表して… 』
嘘………
だって、まだ完結してない作品があるじゃない。
続きを楽しみにしてたのに。
まだまだ、いろんな物語を書いて欲しかったのに。
私は、その場に立ち尽くした。