美男子の部屋に保護されました
宮原さんに連れられてやってきたのは、隣の市にある店舗。

晴野店よりかなり大きい。

私は嬉しくなって、店内を歩き回る。

小説もマイナーな作家や、古い作品まで揃っていて、わくわくする。

私は中学生の頃に読んだ作品を見つけて、思わず手に取った。

懐かしい。
あの頃、感動したな。

私はもう一度読んでみたくなり、その本を持ってレジに向かった。

会計を済ませて、喫茶コーナーに向かう。

ゆっくりとコーヒーを飲みながら、ページをめくった。

「………さん。
由里子さん!」

名前を呼ばれてハッとする。

慌てて顔を上げると、向かいに宮原さんが座っていた。

「由里子さんは読書を始めると、周りの音が
聞こえなくなるんですね。」

宮原さんが笑って言う。

「あ、もしかして、ずっと呼んでくださって
ました?」

いつものことながら、申し訳なくなる。

「呼びましたし、電話もしましたよ。」

「えっ!?」

私は慌てて携帯を開いた。

そこには、着信履歴が5回分、並んでいた。

「すみません。全然気付かなくて。」

「無事ならいいんです。
何かあったのかと、心配しましたけど。
次からは、まず喫茶コーナーを探すことに
しますよ。」

宮原さんは、こんなにご迷惑を掛けたのに、全く怒ることなくそう言ってくれた。

本当に申し訳ない。
< 26 / 91 >

この作品をシェア

pagetop