美男子の部屋に保護されました
図書館は、月曜が休館日で、あと1日はみんなが交代で休みを取る。

だから、連休が取れるのは、月に1度くらいしかない。

大抵は、月曜と水曜だったり、月曜と金曜だったりと飛び石にしかならない。

また、週末は、基本的に外せない用事がある方しか休めないので、私は就職してから、ほとんど休んだことがない。


宮原さんの家に住むようになってからは、送迎のために宮原さんが、私の休みに合わせてくれている。

エリアマネージャーの彼は誰かとシフトを組むわけではなく、会議や取引先との打ち合わせがない日に自由に休みを入れられるんだそうだ。


そうして月曜の朝、私たちは出かけた。

まず、『朧月』のヒロインが働くカフェに寄る。

物語で描写されていた通り、落ち着いた煉瓦の壁に、素焼きの赤茶色の瓦屋根、白い格子窓のかわいらしい建物。

道路から短いアプローチがあり、左右には色鮮やかなマリーゴールドと共に、ミントやタイム、ローズマリーなどが植えられている。

「すごく素敵。想像してた通りです。」

私がそう言うと、隣に立った宮原さんも

「そうだね。
メニューも同じなのかな。」

と興味深げに外観を眺める。

そして、私の手をそっと握り、
「入ろうか。」
と微笑んだ。

どうしよう。

しっかりと握り直された手から、宮原さんの体温が伝わる。

私より一回り大きなその手は、私のとは全然違うものだった。

少し骨張っていて、力強くて、頼り甲斐のある男性のものだと思えた。

それは、普段の優しくて温厚な宮原さんとは少し違う印象を私に与える。


私は「はい」と返事をして、宮原さんに手を引かれて店に入った。
< 39 / 91 >

この作品をシェア

pagetop