美男子の部屋に保護されました
「綺麗だなぁ。これでもかってくらい、
くっきりはっきり見える。」

と宮原さんは苦笑する。

「まぁ、朧月は春の季語ですから、夏には
見られませんよ。」

私が言うと、

「じゃあ、これも来年だな。」

と宮原さんは言って、私の腰を抱いた。

そんなことをされた事がない私は、焦って固まってしまう。

えっと、こういう時は、どうすればいいの?

私が固まったままでいると、宮原さんの手が腰から離れた。

私がほっとしていると、今度は手がうなじに添えられる。

きょとんとする私の前に、月を背にした宮原さんの顔が近づき、そのままそっと私の唇に触れた。

一瞬触れて、離れたかと思うと、再び、しっとりと押し当てられる。

それがキスだと気づいたのは、宮原さんの唇が再び離れてからだった。

「由里子さん、好きです。
ずっと好きでした。」

宮原さんは、右手で私の髪を優しく撫で、左手で私の手を握りながら言う。

「え、はい、あの、私も… 」

私は恥ずかしくて、それだけ言うのが精一杯だった。

私、キスした…
宮原さんと…

心臓が飛び出しそうなくらい、ドキドキしてる。

するともう一度、宮原さんの顔が近づいてきた。

唇が触れた瞬間に私は目を閉じた。

目を閉じると、これまで以上に宮原さんを近くに感じた。
< 44 / 91 >

この作品をシェア

pagetop