美男子の部屋に保護されました
図書館を出て、裏通りにある近くの居酒屋さんへ優美と2人で歩く。

ここは、通りから一本奥へ入っている分、客層も落ち着いていて、お料理もおいしい。

私たちは、ビールとおつまみを何品か頼んで、館長への不満を肴に楽しい時間を過ごした。


9時半を回り、優美を迎えに男性が来た。

「こんばんは。」

挨拶をしたものの、私は彼とは初対面。

優美に声を潜めて聞いた。

「ねぇ、この前の人と違うね。」

「ふふ、あの人、顔は好みだったんだけど、
収入が少なかったから別れたの。」

優美は悪びれもせずに言う。

「好きじゃなかったの?」

そんなことで別れるなんて、私には理解できない。

「好きだったわよ。体の相性も良かったし。
でも、お金って大事じゃない。」

そう言い残して、優美は「また明日ね」と男性と帰っていった。

お金がないから別れる?

そりゃあ、私も無職の人とは結婚できないと思う。

でも、それはお金がないからというより、働こうとしない人とは価値観が合わないからであって、収入が全てではないと思う。

もし、今、大和さんの会社が倒産して、大和さんの収入がなくなったとしても、私は大和さんが次の仕事を見つけるまで支えたいと思うし、今より収入が減ったとしても、私も働いてるし、慎ましく2人で暮らせたらそれでいいと思う。

そんなことを思いながら、私はタクシーを拾い、帰宅する。

マンションのエレベーターに乗り、最上階のボタンを押す。
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