美男子の部屋に保護されました
エレベーターを降りると、そこには大和さんの部屋のドアがあるだけ…のはずだった。

何!?

部屋の前に男性が立っている。
いつも図書館の書棚の陰から、カウンターを眺めている男性。

3ヶ月前の恐怖が蘇る。

私は、エレベーターを降りず、必死で『閉』ボタンを押した。

けれど、エレベーターに押し入ってきた男に腕を掴まれ、引きずり出される。

逃げようと必死になるけど、どうやっても男性の力には抗えない。

そのまま、羽交い締めにされて、口を手で覆い塞がれる。

「騒ぐな。
暴れなければ、酷いことはしない。」

やだ!
助けて!!
大和さん!!

声にならない声で助けを呼ぶが、物音すら誰にも届かない。

男の手が口から離れた隙に、大声を出してみたけれど、あっという間に口の中にハンカチのようなものを押し込まれ、あらかじめ用意されていたガムテープで口を塞がれてしまった。

そのまま後ろ手にガムテープでグルグル巻きにされ、肩から下げていたバッグを引っ張られる。

バッグを開けた男は、中を探ってニヤリと笑った。

男の手にあるのは、この家の鍵。

助けて!!

中に連れ込まれたら、誰にも助けてもらえない。


男が鍵だけ持ってバッグを離すと、ぶらんと振り子のように揺れて、私の足に当たった。


その時、仕事中からマナーモードにしたままの携帯がバッグの中で震えるのを感じた。

大和さん!!

出たい。
助けてって言いたい。

でも、後ろ手にガムテープで巻かれているから、それもできない。


男は、部屋の鍵を開けた。
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