美男子の部屋に保護されました
「だからって、初対面の男の部屋に転がり
込むなんて、危ないだろ。」

父は苛立ちを隠せないでいる。

「初対面じゃないの。
私がいつも行く宮原書店の方なの。
しかも、大和さんはすぐにトラックまで手配
してくれて、その日のうちにベッドまで
運んでくれたのよ。
もし私に何かするつもりなら、ベッドなんて
運ばないでしょ。
それから、毎日、忙しいのに、私の通勤に
合わせて図書館まで送迎してくれて…
本当に感謝しても しきれないくらい
お世話になったの。
お父さん達からもお礼を言って。」

私がそう言うと、母は頭を下げた。

「まあまあ、それは本当に由里子がお世話に
なりました。
ありがとうございます。
それで?
由里子、その犯人は捕まったの?」

「実は、私が出張で家を空けた隙に、再び
由里子さんが狙われまして…
私が、甘く考えてたせいです。
申し訳ありません。」

大和さんが頭を下げる。

「ううん、違うの。
大和さんは、精一杯、私の事を考えて
くれて、大和さんの留守中は、タクシーで
通勤できるようにタクシーチケットまで
用意してくれたの。
でも、犯人はこの階のエレベーターホールで
待ち伏せしてて…
たまたま大和さんが、1日早く帰って来て
くれて、部屋に引きずり込まれようとした
所を助けてくれて、犯人も捕まえてくれて、
警察とかいろいろ対応してくれたの。」

私の話を聞きながら、両親の表情は強張っていった。

「じゃ、由里子は無事だったのね?
何もなかったのね?」

「うん。
私が抵抗して暴れたから、多少の擦り傷とか
打撲はあったけど、それだけで済んだの。
全部、大和さんのお陰。」

私がそう言うと、母は目に涙を浮かべて、

「本当に何もなくて良かった。
宮原さん、
本当にありがとうございました。」

と頭を下げた。

そして、隣の父に、

「ほら、あなたからもお礼を言って!」

と促した。

「由里子を助けてくださってありがとう
ございました。」

父は見たこともない複雑な表情で頭を下げた。

が、それだけでは終わらないのが父だった。

「でも、ここで襲われたなら、ここも決して
安全ではないという事だろ?
どうして由里子はまだここにいるんだ?」
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