美男子の部屋に保護されました
「そうねぇ。
由里子の事を大切にしてくださる方なのは、
よく分かったわ。
宮原さんは、宮原書店にお勤めなんです
よね?
それって… ?」

母が窺うように尋ねる。

「はい、お察しの通りです。
宮原書店は父が代表を務める会社です。
私自身は、現在エリアマネージャーをして
おります。」

宮原書店は、この辺りでは最大手の書店。
店舗数も多い優良企業。

「宮原さんが、跡を継がれるの?」

「はっきりとは申し上げられませんが、
順当に行けば、そうなる可能性が高いと
思います。」

そうなんだ…
なんとなく、そうじゃないかとは思ってたけど…

「由里子は良くも悪くも普通の子です。
そんな大きな会社の社長夫人が務まるとは
思えませんが… 」

母の言葉にハッとする。

そうか。
大和さんと結婚するって事は、将来の社長夫人になるって事なんだ。

私は途端に不安になった。

「社長夫人だから、どうという事は
ありません。
私も、由里子さんに特別、仕事上の何かを
求めてるわけではありませんし。
由里子さんは由里子さんのやりたい事を
していただければ、私はそれを全力で応援
したいと思ってます。」

「いいの?」

私が尋ねると、大和さんは優しく微笑む。

「当たり前だろ?
仕事上の事は、社員がやれば済む話だし。
由里子は、司書を続けたいなら、続ければ
いいし、家庭に入りたいならそれでもいい。
毎日、由里子の笑顔を見るのが俺の幸せ
なんだから。」

どうしよう。
すごく嬉しいんだけど、すごく恥ずかしい。
できればそういう話は、両親のいない所で聞きたかったなぁ。

「とにかく、私は由里子さんなしでは
生きられません。
どうか、このまま由里子さんと一緒に生活
させてください。」

大和さんが頭を下げるので、私も「お願いします」と一緒に頭を下げた。
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