毒壺女子と清澄男子
要するに呼ばれた全員が参加すると言っておきながらバックレてここでのOB会を企画したのだろう

ポッカリと空いた式場の新郎友人側席を想像し、あたしは思わず笑い声を上げた

それを聞いた全員が次の彼氏を紹介するだとか、俺はどうだと声を上げたが営業として開眼しつつあったあたしは丁重に断りを入れた

「とりあえず行ける所まで行って、それから考えますから」



それから数年後、晃がどうなったかあたし達が付き合っている事を知らなかった大学の同期と偶然会った時に聞かされたけれど、年上妻に尻を叩かれて旧財閥系企業から外資に転職し、そこで経理をやっているようだ

「俺に本郷さんは何してるの? って聞いて来たけど、変わらないよって」
「変わってないよ、仕事への意識以外はね」

自分からやらかして別れた元カノの近況を知りたがるとか、頭がどうかしているとしか思えない

ああ、もしかしたら性病うんぬんかんぬんのくだりが気になっているのだろうか、それともあれから年上妻の体に元々なにかあってそれが発覚したのかも知れない

そんな事はもはやどうでもいい

都内に実家はあるものの、2年前に家業の騒がしさから一人暮らしを始めたマンションの部屋にたどり着き、外界の穢れを落とすべくうがいと手洗いをして、すぐに冷凍庫から休日に作りおきしたトマトシチューを取り出してレンジへ放り込む
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