毒壺女子と清澄男子
ジャケットを脱いで寝室のクローゼットに付いているノブへ今朝ひっかけたままにしていたハンガーに吊るし、そのままリビングへ引き返すと再び冷蔵庫を開けて、休日の作りおき常備菜の豆の煮物や野菜のピクルスを取り出す

この段階でトマトシチューの解凍温めが終わり、ピーピー鳴り出したのでそれをキッチンカウンターへ冷凍コンテナのまま置いて、ハイチェアーに座りテレビを点ければ一人の夕食の始まり

ー 遅い夕食の時は消化にいい物を食べなさい、寝付きが良くなるから翌朝のパフォーマンスが違うよ ー

あの頃、神田さんが教えてくれた事は営業テクだけではない、常に自分の会社員としての価値を上げる事でこの大変な時代を生き残るかというサバイバルテクニックもだ

多分、能動的に人生設計の変更をせざるを得なかったあたしの様子を察してそうしてくれたのだろう

夕食を終えて簡単な後片付けを済ませると、もうスポーツニュースが始まる時間

そろそろ風呂に入って寝なくては明日に差し支えるのでバスルームに行き、シャワーだけ浴びてバスタオル1枚のまま翌日のスーツやバッグを揃えていると寝室の壁から妙な物音が聞こえた

ドガン……ドガン……ドガガガガガ……
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