毒壺女子と清澄男子
新製品導入にあたっての要望を聞き取り、出版社のロゴが記されたUSBメモリーと『少年探偵アケチの記憶』のファイルへ納められたイラストをキヨちゃんから受け取り、最後に雑司ヶ谷大先生へご挨拶をしようとその姿を探したが作業場から既に消えていた
「あの、先生は? 」
「多分、裏の畑で農作業してると思います。先生は農大卒なんでそういうの好きなんですよ」
「ご挨拶を最後にしたいので案内していただけますか? 」
「はい」
一旦玄関を出て、猫が数匹寛いでいる気持ち良さそうな縁側を眺めつつ裏庭に回るとそこに広がってたのは広い畑と小さな水田、大先生は畑の一角でくわえタバコのままミニトラクターを走らせている
「先生ー! エプソムの営業さんが挨拶にー」
「んー、今、忙しいからー、あとはよろしくー」
「今日はありがとうございました、また改めて! 」
「あー羊羹ごちそうさん、嫁が喜んでたー」
そうだ、奥様もいらしたのだ、そっちもご挨拶をと思ったがキヨちゃん曰く犬6頭とヤギの散歩に出かけていると聞き、次回にしてさぁ車に戻ろうと思ったがあの獣道を通るのかと思い出して憂鬱になる
これを察したキヨちゃんは、畑の奥に近道があると教えてくれた
「わかりづらいと思うのでご一緒します」
「何から何まですみません」
「いえいえ、これも僕の仕事ですから」
帰りのゆるやかな坂を進む中、キヨちゃんに何の仕事をしているのか尋ねてみると…彼は大先生のアシスタントの中でトップのチーフアシスタントだった
見た感じではかなり若く、あたしより数年年下だと思っていたが…
「中学生の頃に先生へイラストを持ち込んで直談判して、高校生の頃にサブアシのバイトで入ってそのままアシスタントでやって行こうと思ってたんですけど先生が大学に行かなきゃダメだって、それでとりあえず国立の美大に行きながらお手伝いをしてそのまま就職しました」
「国立の美大…」
そこへ入るには普通に絵がうまい程度ではまず無理だ、並外れたセンスと才能と個性がないと試験に合格出来ないというのに『とりあえず』って
見た目は冴えないけれど凄い人間だったのだ、このキヨちゃんは
「あの、今日はありがとうございました」
坂道を降りて例の獣道の入り口近くに停めた車の前で頭を下げて車へ乗り込み、いつまでも見送るキヨちゃんを背に再び会社へ戻ったのだが、そこでは大騒動が起きていた
「あの、先生は? 」
「多分、裏の畑で農作業してると思います。先生は農大卒なんでそういうの好きなんですよ」
「ご挨拶を最後にしたいので案内していただけますか? 」
「はい」
一旦玄関を出て、猫が数匹寛いでいる気持ち良さそうな縁側を眺めつつ裏庭に回るとそこに広がってたのは広い畑と小さな水田、大先生は畑の一角でくわえタバコのままミニトラクターを走らせている
「先生ー! エプソムの営業さんが挨拶にー」
「んー、今、忙しいからー、あとはよろしくー」
「今日はありがとうございました、また改めて! 」
「あー羊羹ごちそうさん、嫁が喜んでたー」
そうだ、奥様もいらしたのだ、そっちもご挨拶をと思ったがキヨちゃん曰く犬6頭とヤギの散歩に出かけていると聞き、次回にしてさぁ車に戻ろうと思ったがあの獣道を通るのかと思い出して憂鬱になる
これを察したキヨちゃんは、畑の奥に近道があると教えてくれた
「わかりづらいと思うのでご一緒します」
「何から何まですみません」
「いえいえ、これも僕の仕事ですから」
帰りのゆるやかな坂を進む中、キヨちゃんに何の仕事をしているのか尋ねてみると…彼は大先生のアシスタントの中でトップのチーフアシスタントだった
見た感じではかなり若く、あたしより数年年下だと思っていたが…
「中学生の頃に先生へイラストを持ち込んで直談判して、高校生の頃にサブアシのバイトで入ってそのままアシスタントでやって行こうと思ってたんですけど先生が大学に行かなきゃダメだって、それでとりあえず国立の美大に行きながらお手伝いをしてそのまま就職しました」
「国立の美大…」
そこへ入るには普通に絵がうまい程度ではまず無理だ、並外れたセンスと才能と個性がないと試験に合格出来ないというのに『とりあえず』って
見た目は冴えないけれど凄い人間だったのだ、このキヨちゃんは
「あの、今日はありがとうございました」
坂道を降りて例の獣道の入り口近くに停めた車の前で頭を下げて車へ乗り込み、いつまでも見送るキヨちゃんを背に再び会社へ戻ったのだが、そこでは大騒動が起きていた