毒壺女子と清澄男子
「本郷先輩! 今までどこに行ってたんですか! 今朝、病院から電話があって抜け出したって! 心配してたんですよ! 」
「エリカちゃんごめん、大事な取引先の挨拶にどうしても行きたくて」

エリカちゃんに責められていると、今度は課長が側にやって来て

「本郷さん! 銀座で外人にお姫様抱っこされてたって取引先の女子が見たらしくて、代わりに回ったアポ先で噂になってたよ、ほら、あの映画のボディーガードみたいだって! 」
「すみません…」

エ、ンダーァァァァァー イヤァァァーーーアアアアーー

という映画のメインテーマが頭の中に流れ、次からそこへ行きづらくなるだろうとうなだれていると、今度はどこかしらからの電話を受けていたおばちゃんの口から流暢な英語が流れているのに気づく

「ナンバー イズ ゼィロゥエイトゥ ゼィロウ……」

その番号を頭の中で変換すると080☓☓△…

どこかで聞いた事のある番号だ、はてどこだろう

080☓☓△△…

これはあたしの私用スマホの電話番号だ!

一体誰からの電話で英語で私用スマホの電話番号を…

そもそもうちの部署に海外の客が電話を掛けて来ることなどない

海外、外人、電番…

「センキュー ユアコーリング バイバーイ あ、本郷さーん、今さっきミスター ティヤンディーから電話番号を教えてくれって電話があって教えたんですけどぉー」

おばちゃんの手元には緊急時の営業部の電話番号一覧があり、そこには全員の業務用携帯番号と私用番号がある

もうあたしは何も言えなかった

おばちゃんは英語だけは得意だったのだ…

対するあたしは英語など大学受験以降、すっかり抜け落ちてハローレベル

しかし、次の瞬間にそのティヤンディー氏からのメッセージ攻撃が始まった

しかも全文英語のメッセージとあり、意味が全く分からないので面倒になり

『ワタシエイゴワカリマセーン』

という文章だけは浮かんだのでそれを打ち込んだ、がしかし
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