秘密の同居生活~オレ様副社長の罠にはめられました~
もちろん、その日の夜の葛城の豚の生姜焼きもおいしかった。

だいたい俺は、世の中にこんなおいしいものがあるとは知らなかった。

俺は九条家の長男として厳格に育てられた。

九条家と言えばさかのぼればいわゆる明治は華族、さらにさかのぼれば貴族と呼ばれた名門だ。

現代の令和の時代になって時代錯誤なことじゃぁあるが、小さいころから家にはシェフがいたし、こういう庶民的な女性とつきあったことはなかったので家庭料理というものを食べたことはなかった。

はじめて食べたのは初日の何品かのつまみだったけど、5分ほどキッチンにいたと思ったら、パパっと3品もでてきてびっくりしたもんだ。

それがまたうまい。
日本酒もだけど…。

酒を飲まない日のがっつりごはんは今みたいにボリュームのあるものをつくってくれるけど、この素朴な味がたまらない。

ごちゃごちゃと凝ってないけど、めちゃくちゃ素朴なのに心に響く深いこの味は一流のシェフには出せないものだった。


俺、完全にはまってるな…。

こいつのペースに…


いや…こいつに…はまってんのか?
< 61 / 244 >

この作品をシェア

pagetop