秘密の同居生活~オレ様副社長の罠にはめられました~


次の日からの出張ほど長く感じたことはない。

シンガポールの支店で大掛かりなプロジェクトをどうしても夏の間に決めないといけないのだ。
とりあえず、1週間…耐えた。

仕事が忙しいから知らないうちに過ぎ去ってはいたけれど、この空虚感たるや…

葛城がはじめて副社長室に入ってきた日から2週間もたっていないはずなのに、大昔から知っていたやつがそばにいなくなったかのような空虚感は何なんだろう?

俺にとって葛城はなんなんだろう?


ぼーっとそんなことを考えていたら、そのとき俺のスマホが震えた。

表示名を見て、内心舌打ちしながら画面をスライドさせる。

『春臣。いったいどこにいるの?』

あいかわらず、うぐいすみたいなかわいらしい声を出すなと思う。

『仕事だよ。今、シンガポールにいる。』

それは、ちょうど仕事が終わってシンガポールの役員たちと食事を終えてホテルに戻った時だった。

『おばさま、怒っちゃったわよ。』

『怒られても無理なもんは無理だ。』

ネクタイを緩めてソファに深々と腰を沈めた。

『わたしは…もう覚悟したのに…。』

かおりのその言葉にズキンと胸の奥が痛む。
覚悟決められてもな…

『自分の胸に手をあててよく考えてみろ。そんなんでいいわけないだろ?』
< 62 / 244 >

この作品をシェア

pagetop