秘密の同居生活～オレ様副社長の罠にはめられました～

◇

え？誰だこいつ？

土曜日の昼下がり。
葛城邸に空港から寄り道もせずタクシーで乗り付けた俺を待っていたのは、ジーパンにTシャツ姿の普段着の葛城と、そしてその葛城と親しそうに話し込んでるこれまたジーパンにTシャツの男だった。

玄関ドアを開けるなり、2人のシルエットが目に飛び込んできてギョッとする。

葛城は俺に気づく前に

「諒(りょう)ちゃん。ありがと。」

と言って、大きなタッパーを渡しているところだった。

諒ちゃん？
その呼び方にちょっとイラっとしながら俺はわざと大きな音をたてて荷物を置いた。

俺が入ってきたことに気づき、葛城は、

「うわっ！」

とびっくりしてちょっとばかしあとずさりした。

なんだよ。「うわっ！」って…。

「ふっ」

たぶん副社長と言おうとして、まずいと思ったんだろう。
そこで、何も言えずにかたまってしまった。