先生の全部、俺で埋めてあげる。

「夕惺くんって彼女いるの?」

「いないけど」

「じゃあ、私と付き合おう?」



挨拶みたいな軽いノリで付き合おうかとか言ってくる女。



「別にいいよ」



俺も同じノリで返事をする。



「いいの!?」



俺の返事に目の前の女は驚いていた。



「え、なに?」

「うんん。嬉しい」



そう言ってその女は俺の隣に来て、歩き始めた。



「そう言えば名前なに?」

「名前も覚えてないのに付き合ってくれるの?夕惺くんって変わってるね」



そう言って女は笑った。



「芽衣(めい)だよ」

「芽衣ね、覚えるよ」

「覚えるだって、ホント変わってる!」



こんな土砂降りの日に、告白してくるお前も相当変わってると思うけど。

そう思いながら歩幅を合わせて学校に向かう。



俺はいつもこんな感じ。

来るもの拒まず、去る者追わず。

誰が俺のことをどう思っていようが、俺にはどうでもよかった。

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