先生の全部、俺で埋めてあげる。
学校について教室に入ると、いつもより教室がザワついている気がした。
「今日、新しい先生来るんだって!」
クラスの女子の話し声が聞こえる。
「この時期に?」
「ほら、担任妊娠してたでしょ?」
「でもまだ先だったよね?」
「緊急入院だって!」
女子はどこでそんな情報を仕入れてくるのかいつも不思議だ。
「おはよ」
いつも一緒にいるクラスのヤツらに声をかければ、
「なーなー聞いたか?!新しい先生、超美人なんだって!!」
って、お前らもどこで聞いたんだよ。
「へー」
新しい先生とか興味のない俺は適当に返事をする。
「夕惺、ホントそういうの興味なさそうだよな」
友達の一人、柾木(まさき)が俺を見ながらつぶやいた。
「そんなことないよ」
確かに俺は、俺を取り巻く環境に一切の興味がない。
先生が変わったところで、俺の人生は何も変わらない。
この時までは、そう思っていた。