先生の全部、俺で埋めてあげる。



「先生、あの」


「もしかしてずっと待ってたの?」




「いや、あの、俺のブレザーがなくて」


ずっと待ってたって言うのがイヤで、先生の質問には答えず、会うために用意していた口実を並べた。


「この間、先生の家に忘れてったかなーって」


「あ、そうだよね。ごめんね」


先生は手に持っていた袋をそのまま俺に渡した。




「ずっと返そうと思ってたんだけど、タイミングがつかめなくて…。ごめんね」


なんで先生が謝るんだよ。


「こちらこそ、あって良かったです。ありがとうございます」




用件はもう終わった。


帰らなくちゃ。


先生にバイバイって言って、また来週学校でって。


なのに体は動いてくれなくて。




ただ、先生を見つめることしかできない。



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