先生の全部、俺で埋めてあげる。



先生はそんな俺に気づいていているのか気づいていないのか、何も言わない。


アパートにも入ろうとしない。




先生からいなくなってもらわないと、俺は帰れないのに。




「里巳くん、この間、大丈夫だった…?」


「え?」


先生が自分の唇に指をあてながら聞いてきて。


理解するのに少し時間がかかった。




…忘れてって言ったのに。




「大丈夫です。
でもまさか噛まれるなんて思っていませんでした」


「本当にごめん…」




「なんで先生が謝るんですか。悪いのは俺です」


「でもごめん」




だから、何で先生が謝るんだよ。



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