先生の全部、俺で埋めてあげる。



俺は詰まりそうな胸を抑えて、言葉を並べた。


「俺も急にあんなことして…。
先生には悪いことしたなって思ってます」




後悔はしてないけど。




「うん…」




「先生、風邪はもう大丈夫ですか?」


「え?」


「結局風邪引かせてしまって、ごめんなさい」


「里見くんのせいじゃないよ…。
じゃあ、もう遅いから…」


そう言って先生は自分のアパートの鍵を開けようとした。




さっきから先生は、全然俺の目を見てくれなくて。


もうこのまま、一生俺のことを見てくれてないのかもしれない。


そう思うと本当に苦しくて。


部屋に入っていく先生を必死に呼び止めていた。



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