先生の全部、俺で埋めてあげる。




次の日。


鉛のように重たい体を起こして、制服に着替える。


ブレザーに袖を通すと、まだかすかに先生の匂いがして。


それだけで気がおかしくなりそうだった。




学校について自分の席に鞄を置くと、柾木が近づいてきた。


「今日、来るの遅かったな」


「そうか?」


時計を見るとチャイムが鳴るギリギリの時間で、自分でもびっくりした。


どうでもいいけど。




「あれ、夕惺香水変えた?」

なんて言いながら、柾木は俺の周りで鼻をくんくんさせている。




「香水なんてしてねーよ」


「えー、いつもと違う匂い」


「は?お前気持ち悪いんだけど」




「でもこの匂い、どっかで嗅いだことあるんだよなー。

どこでだったかなー?ここまで出てきてるんだけど!」


って今にも先生だって、ばれてしまいそうでヒヤヒヤする。




「知らねーよ、誰だっていいだろ」




「分かった!

莉子ちゃんの匂い!」



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