先生の全部、俺で埋めてあげる。

HRが終わって先生が出て行った瞬間に、クラスのみんなは先生の話でもちきり。
少し複雑だった。

あの人の存在は俺だけが知っていればそれでよかったのに。



「あの先生ならずっと担任でいてほしいよな」

「もうちょっとスカート短かったらなー!」

「生足かな?!」



男子の下品な会話が耳に入ってきて、思わず眉間にしわが寄る。



「夕惺はどう思った?」



柾木に不意に聞かれて。



「別にどうとも」



俺は関心がないかのように返事をする。



「え?あのレベルで何も感じない?!さすがに理想高すぎじゃね?」

「そんなことないって」

「夕惺が好きになる女ってどんなのか興味あるわー」



柾木は俺の顔をじっと見る。



俺が好きになる女。

そんなの、俺だって分かんねーよ。


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