先生の全部、俺で埋めてあげる。



「お願い離して…」


そう言っている先生を無視して、先生の身長に合わせて瞳を覗き込む。


そんな俺を頑として見てくれない先生。


さっきから俺と目を合わせないようにしてんの、なんなんだよ。




「どっちの目?」


「だからいいって」




ねー、なんで泣いてんの?


「正直に言わないと、俺、また先生になにしちゃうか分かりませんけど」


そう言って更に顔を近づけると、抵抗する先生の腕が止まった。




そしてゆっくりと俺に目線を合わせる先生。


目が合うだけで、心臓が爆発してしまうんじゃないかってくらいドキドキする。




「私もなんで泣いてるか分かんない…」




「なんだよそれ…」




先生はズルいよ。


俺の気持ちを揺すぶるだけ揺すぶって、肝心なところは濁して。




もうヤなんだよ…。



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