先生の全部、俺で埋めてあげる。
俺は学校の門のところで柾木と別れて、今日も図書館へ向かった。
いつもは適当に本を選ぶけど、今日はあの本が読みたい。
加ヶ梨先生と初めて会った時に、俺が持っていたあの本。
先生が好きって言ってたから、あの後借りて、俺も読んでみた。
外国の有名な小説で、翻訳されたものらしいけど、俺には難しすぎて全然話が分からなかった。
先生はこの本の何が好きなんだろう。
一度借りて返したその本をもう一度手に取り、椅子に座る。
集中して読み込んでいると
「里巳くんだよね?」
そう言って声をかけてきた人がいた。
顔を上げると、加ヶ梨先生で。
「あ」
間抜けな声が出てしまった。