先生の全部、俺で埋めてあげる。



「じゃあ、さっき、彼氏が俺のこと知ってたのはなんでですか?」


「それは…言えない」


「は?気になるんですけど」


「里巳くんには関係ない」


「関係ないことないですよね?」


「別に大したことじゃないし」


「大したことじゃないなら言えよ」


「さっきから怖いよ、里巳くん…」


なんなんだよ、なんで言ってくれないんだよ。




「じゃあ、質問を変えます。

さっきトイレの前で柾木を待ってる時。

先生、赤くなったのはなんでですか?」




「…赤くなってない」


「俺、見ました」


「気のせいでしょ」




先生は意地でも俺を受け入れないつもりだ。


なのに、俺を見つめるその潤んだ瞳は、何かを求めているように見えて。


俺の感情をもっと高ぶらせる。



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