先生の全部、俺で埋めてあげる。

「あの、違ってたらごめんなんだけど、ずっと前にここで1回会ってるよね?」



え。



先生は俺のこと、覚えててくれたんだ。

なぜだか胸がギューっとなるのが分かった。



でも俺は、「そうでしたっけ?」とぼけた返事をする。

あんなにも鮮明に覚えているのに。

とぼける意味なんてないのに。



「今日クラス入って、里巳くん見た時、なんか見た事あるかも?って思ってたの!」



先生は満面の笑みでそう言った。

また出た、先生のキラースマイル。



「先生、あんまり笑わない方がいいですよ」

「え?なんで?」



その笑顔は男を惹きつけてしまうから。

なんて絶対言えないけど。


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