先生の全部、俺で埋めてあげる。

「あ、それ」

先生は俺の読んでいる本に気づいたみたいで

「本当に好きだね、その本」

そう言われて。

「ちがっ…」

反射的に否定しようとして止めた。



あれ。

俺、なんでこの本読んでるんだっけ。

好きでもないし、なんなら内容すらもよく分からないこの本を。



「先生はどうしてここに?」



自分でも分からない感情をごまかすように、俺は不自然に話をそらす。



「ちょっと調べ物があったて」



そう言って、先生は手に持っていた大量の本を俺の前の席にどさっとおいて、そのまま座った。

最初に会った時と同じ場所に。

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