先生の全部、俺で埋めてあげる。
「里巳くんは本が好きなの?」
前にもここで会ったから、そう思ったんだろう。
本が好きっていうか、この図書館の静かな空間が好きなだけ。
「まあ、はい」
人がいて。
でも他人で。
一人になりたくない。
でも誰とも喋りたくない。
そんな時、この空間は俺にとって最適だった。
「先生は本、好きですか?」
「うん、好きだよ」
「…どんな本が好きですか?」
「私はミステリーとか好きかな。でも夢中になれる本ならなんでも」
「じゃあ今度おすすめの本とか教えて下さい」
本なんて読まないくせに。
「いいよ。なにがいいかなー」
あれから俺はずっとここにいたのに。
ずっとあなたのこと待ってたのに。
一度も来なかった。