先生の全部、俺で埋めてあげる。
俺が何も言わないでいると、さっきまで彼女だった女は涙を流した。
自分から別れようって言ったくせに。
泣くのは振られた俺なんじゃないの?
嘘でもそんなことないよ、って言ってあげればよかったのかな。
「分かった。別れよう」
俺はなかなか泣き止まない彼女にハンカチだけ渡して、先に屋上を後にした。
重い扉が、鈍い音を立てて閉まる。
いつだってそうだった。
向こうから告白してきて、振られるのはいつも俺。
まあ、自分でも理由はなんとなく分かっている。
俺は普通の人より冷めているから。
好きという感情がどんなものなのか、いまいちよく分からない。
付き合おうって言われたら、とりあえず付き合ってみるし、好きになる努力もする。
だけど、今まで誰一人として好きになれた事がなかった。