桝田くんは痛みを知らない
 まっすぐに、目を見つめられる。

 そらせない。


「オマエが欲しくなった」


 真剣なまなざしに、吸い込まれそう。


「だから、キスした」


 それが、桝田くんの嘘偽りのない気持ちだとわかった。


「どうしても、欲しかった」


 桝田くんの言葉が、ズシンと、心に響く。


「この手でオマエのこと、幸せにできたら」


 …………なんで。


「どれだけ、いいか」


 そんなに悲しそうに言うの?


「してくれ、ないの?」


 したいって、言ってよ。


「ねえ、桝田くん」

「したい」

「っ、だったら……」

「俺には。オマエを幸せにする資格、ない」
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